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【世界の茶園】静岡・藤枝 杵塚茶園

今回ご訪問させていただいた茶園は、
静岡県藤枝市瀬戸谷(せとや)の杵塚さんの茶園。

30年以上、有機無農薬の茶作りとそのネットワーク作りを実践されている杵塚さん。

今回は、すでに書籍にもなっている杵塚さんの取組みとその茶園をご紹介させていただきますね。

▼杵塚さんのホームページ
>人と農 自然をつなぐ会


集落を見おろす高台に広がる杵塚さんの茶園



茶畑のむこうに折り重なる山々

杵塚さんたちが茶作りをする藤枝市瀬戸谷(せとや)地区は、静岡県の中央部に位置し、中央アルプス明石山系六百メートル級の山々が折り重なる山あいの農村です。


家の横にもみかん。レモンもあった。

お茶作りのほかにみかん作りもさかんで、杵塚さんのところでもお茶とみかんを栽培されています。

地形的には、非常に急傾斜の斜面に茶畑が広がり、おぶぶのある京都・和束の地形にもよく似ています。(道のほそさとかも・・・。)



生産者の仲間と共に

杵塚さんたちは、敏明さん(お父さん)の代である1976年から、数名の生産者仲間と消費者の方とともに無農薬での茶作りに挑戦し、現在まで30年以上、その実践とネットワーク作りを続けておられます。

その取組みは、今から10年以上前にすでに書籍化されています。



サンフランシスコのカフェでも杵塚さんの茶園は紹介されている。
クリックすると動画のページに移動します。

この先進的な取組みは、現在次世代である三人の姉妹弟に受け継がれ、さらに進化の途上にあります。

おぶぶでも訪問させていただいたサンフランシスコのカフェ「SAMOVAR(サモアール)」でも杵塚さんたちの取組みは紹介されています。



自宅で飼っている馬。隣の敷地には馬場もある。あと鶏も。

杵塚さんたちの茶作りの特徴は、なんといっても有機無農薬有機栽培でのお茶の育成です。

きっかけは、堆肥作りではなかったとおっしゃっておられましたが、自宅に二頭の馬を飼っていて、その馬糞から堆肥も作っておられます。



茶畑をバックに説明してくださる杵塚敏明さん

一年の作業は、春一番茶の煎茶の収穫、夏の二番茶は、紅茶に加工し、秋の番茶はほうじ茶に加工します。

そのほかの季節は、有機肥料の施肥、それから一番手がかかるのが草取りだそうです。(無農薬で茶を育てる場合、雑草の管理がもっとも重労働になります。)



萎凋(いちょう)室を案内してくれるあゆみさん

一番茶の煎茶の加工にも力を入れておられますが、二番茶の紅茶作りにも非常に力を入れておられます。

2階全体が萎凋室、1階にはスリランカから輸入した巨大な揉捻機(じゅうねんき:お茶を揉む機械)や醗酵室のある紅茶専用の茶工場もあります。

※萎凋:いちょうとは、収穫した生茶葉の酵素の働きにより酸化発酵させる紅茶やウーロン茶独特の工程



スリランカから輸入した紅茶専用の揉捻(じゅうねん)機

無農薬で作る杵塚さんの紅茶の香りには、本来害虫であるウンカたちも協力し、茶葉の香りを蜜のように甘くかぐわしいものにしているとのこと。

※ウンカ(=チャノミドリヒメヨコバイ)は通常、害虫とされるが、ウンカに吸われた新芽には、通常の新芽にはない成分が作られるため、その香りがよくなるといわれている。台湾の東方美人茶(オリエンタルビューティー)なども同様にして作られるウーロン茶である。



毎年100人もの人が参加する茶摘体験

このようにしてできた杵塚さんたちのお茶は、長年の取組みに共感してくれている個人や小売店の方の元に届けられています。また、関東圏の大手生協でも販売されているとのこと。

そして、杵塚さんたちの取組みは、茶作りだけにとどまらず、取組みに共感する多くの人と共に地域おこしにもつながっています。



茶畑の脇に設置された猪のオリ

現在の杵塚さんたちの悩みとしては、猪の被害が年々ひどくなっていること。無農薬有機栽培で育てる茶畑は、猪にとってもうれしい場所のようで、茶畑に住まうミミズや自然薯を掘り起こしたり、茶木をまたいだりするため、木が傷んでしまうとのこと。

また、瀬戸谷地区では、高齢化と近年の茶卸価格の下落により、耕作放棄する茶園がどんどん増えていること。(今回見せていただいた茶園の途中にも多くの放棄茶園を目にしました。)



耕作放棄により、竹に侵食された茶畑

日本の農業自体は、衰退傾向にありますが、その状況を目の当たりにするような様子が広がっていました。(これは、おぶぶのある京都・和束でも同じことが言えます。)

このような現実をどのようにして打開するのか?


瀬戸谷での田植体験のようす

茶畑に立つあゆみさん

一朝一夕で解決するような妙案は、今のところ見つかっていませんが、地道な地域おこしや日本国内での茶文化が見直されるような活動に取り組んでいきたいとのことでした。

そして、次世代のあゆみさん(姉:英語が得意)や民子さん(妹:中国語が得意)たちは、コミュニケーションの壁はすでに乗り越えているので、すぐにでも成長の余地がたっぷりある海外に向けて、これから乗り出してゆかれるに違いありません。



杵塚さんの著書は、
アマゾンで購入可能。

今回、長時間にわたり、お時間をとってご説明してくださったあゆみさんそして敏明さん、本当にありがとうございました!!